BOTANIST Journal 植物と共に生きる。

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SUSTAINABLE 14

自然を学び、未来をつくる。 二年目を迎えたBOTANISTの森。

2022年秋、BOTANISTのスタッフたちはふたたび美幌町を訪れました。今回のメンバーは、ブランドディレクターの東野 藍子、ブランドマネージャーの小林 麻美、アートディレクターの櫻谷 冴子、開発リーダーの西林 遼一郎ら。昨年に植えた苗木の成長を確かめるのに加え、森でさまざまな植物の種を拾い、次世代を担う子供たちに手渡します。

みんなで学び、森を育てる。

2021年より北海道の美幌町に設けられた「BOTANISTの森」。長い時間をかけて森を育てていくこのプロジェクトは、地元行政や森林政策の専門家、木材を扱う企業など、多くの人々や機関が協力しあってスタートしたものです。

その目的は「人と植物がいつまでも 共に生きられるような地球環境の持続をサポートする」こと。2021年にはおよそ1000本のハンノキの植栽が行われ、森づくりの最初の一歩を踏み出しました。

それからおよそ1年が経過した2022年秋、BOTANISTのスタッフたちはふたたび美幌町を訪れました。今回のメンバーは、ブランドディレクターの東野 藍子、ブランドマネージャーの小林 麻美、アートディレクターの櫻谷 冴子、開発リーダーの西林 遼一郎ら。昨年に植えた苗木の成長を確かめるのに加え、森でさまざまな植物の種を拾い、次世代を担う子供たちに手渡します。これらの種から苗木を育ててもらい、植林までつなげようという計画です。

広葉樹を増やし、多様性のある森へ。

BOTANISTの面々がまず向かったのは、美幌町の歴史・自然・芸術にまつわる資料の収集・保存を行っている美幌博物館。体験学習の拠点としても活動するこの博物館の学芸員で、植物を専門とする城坂(平林)結実さんから、森の植物について学びます。

そして一同は美幌町の豊かな森に移動し、広葉樹の種拾いを楽しみました。森の植物の種類が多様であることは、世界全体の生物多様性を保つにあたっても大きな意味を持っています。しかし、日本の森林は、広葉樹林よりも針葉樹林に大きく偏っているのが現状です。この不均衡は、針葉樹の方が成長が早く加工がしやすいという産業上の需要からもたらされてきました。BOTANISTの森は、針葉樹を伐採した跡地に広葉樹を植えて「多様性のある森を戻す」試みでもあるのです。

東京農業大学の生産産業学部 自然源経営学科の小川 繁幸准教授は、生物多様性を保つには水分の循環を意識することが大事だと語ります。「流域という考え方は、わかりやすく言うと、川上から川下という考え方があるんです。広葉樹の森にもたらす循環というのは、やはり落葉することです。葉っぱが落ちるとどうなるかというと、地面にはいろんな昆虫だとか微生物がいるので、こういった生き物が葉っぱを分解してくれます。分解してくれる過程において、実は栄養、ミネラルというものが、土壌中で形成されていきます」

「雨で水として流れるときに一緒に川に流れ込んだり、海の豊かさというところの中に実はこのミネラルが非常に大きな影響を与えていて、森から出た恵みというものが、大地と海まで還元されていく。こういったことを考えていくというところが、流域の中では一つ大事な視点かなと思います」

子供たちと森に親しみ、共に生きていく。

BOTANISTメンバーが次に向かったのは旭小学校。大きさも色も形もさまざまな種の数々を袋に詰めて、子供たちに届けます。子供たちは森からの収穫を前にして好奇心いっぱい。思い思いに種を手に取り、おしゃべりも弾みます。

北海道水産林務部 森林環境局の寺田宏局長は、『木育』の考え方と、さまざまな森林の整備や保全についてお話してくれました。「『木育』というのは、木を育て、木に育てられるという考え方なんです。子供は五感が発達する上で、木を触ったり、匂い嗅いでみたり、そういったことを通じて自然を理解するんですけれども、子供の頃から自然に触れることで、どうやったら自然が守れるんだろうとか、どんな生き物がいるんだろうかというようなことを、子供自ら主体的に考えられるような気づき、そういったことを身につけられるというふうに思います」

二年目のBOTANISTの森と、これから。

子供たちとの交流の後は、いよいよBOTANISTの森へ。およそ1年前に植えたハンノキの苗木たちはしっかりと根付き、成長していました。この日は、美幌町役場の技師、藤田知典氏の指導を受け、全員合わせて15本ほどの植栽を行うことに。この後1~2週間ほどで、さらに2000本を植栽する予定です。BOTANISTの森は、多様性を守る森として設定され、それを活かすために森林整備を行っていくのです。

昨年も苗木の植樹に参加したブランドマネージャーの小林は感慨深げに語ります。「去年植えた木が本当に成長しているのを間近で見て、まず継続して森に関わっていくことを、2年目で少し体験できたというか。今年植えた木も大きく育っていってくれるといいなと思ってます」

アートディレクターの櫻谷は、遠い未来に思いを馳せます。「人から人に受け継がれて長く成長してくれたらいいなっていうふうに思っています」

自然の大切さを共に学び、伝えていこう。ブランドディレクターの東野は、この持続的なプロジェクトへの想いを強めます。
「子供たちも自然の恵みを一緒に学びながら感じてもらうことで、これからの世代にも植物の大切さっていうのも伝えていきたいと思います」

楽しみながら植物と共に

今はまだ若い苗木が並ぶBOTANISTの森。うっそうと樹々が茂るようになるのは数十年後か100年後かわからない、いくつもの世代をまたぐことになりそうなプロジェクトです。

寺田局長は自然への想いを伝えます。「今の自然は未来からの借り物っていう考え方があって、やっぱりつなぐっていうことが非常に重要かなと。 次の世代にしっかりつなぐと」

また、小川准教授は、以下のようにも指摘しています。「単に『これは大事ですよ』っていう、守るだけではなかなか伝わらないかもしれません。共感を得るために一番大事なのは、私は楽しむことだと思っています。いかにこの森で楽しむのか、実は100年先の森を作る中で、一番大事な点じゃないかなと思っています」

子供たちの子供たちが生きる未来を想像しながら、今この時を楽しみ、慈しむこと。それが大切なものを守り、次の世代へと手渡していくことにつながるのです。自然を身近に感じる日々を重ねて、100年先の未来へ。わたしたちはBOTANISTの森を多様性に富んだサスティナブルな空間へと育てていく過程で学びの経験を積み、その恵みをみなさまにお届けしたいと考えています。

東京農業大学 自然資源経営学科 小川繁幸准教授

北海道水産林務部 森林環境局 寺田宏局長