植物由来&分解可能 環境に優しいプラスチックの可能性 | ボタニカルライフスタイルマガジン - BOTANIST Journal

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SUSTAINABLE 05

植物由来&分解可能 環境に優しいプラスチックの可能性

レジ袋の有料化など、日本でもプラスチックゴミの減少を目指す取り組みが、地球環境問題の解決のため推奨されています。そんななか、地球環境に優しいプラスチックの研究をされている東京大学岩田教授に、プラスチック、自然の力などについてお話を伺いました。

ゴミとなったとしても
環境に優しいプラスチックの研究

地球温暖化や海のゴミ問題が、世界中の解決すべき課題として叫ばれる昨今。その最大の要因ともされるのがプラスチックです。石油とともに近代資本主義において重要な役割を果たしてきたプラスチックは、今や地球を脅かす存在として捉えられてもいます。
しかし、プラスチック自らが環境に害を加えているわけではありません。また、ひとことでプラスチックとまとめても、燃やしても地球温暖化の原因である二酸化炭素の増大にはならない植物油や糖などが原料のバイオマスプラスチックもあれば、海の中で自然に分解する生分解性プラスチックもあります。
バイオマスからつくられ生分解もするプラスチックの研究開発をされている東京大学の岩田教授。「バイオマスプラスチックとは、燃やしたときに、二酸化炭素が発生しても植物体のバイオマスにもう一度吸収されるので、地球温暖化の原因にはならないのです。一方、生分解性プラスチックとは、何年か後に海の中で分解されるものです。生分解性であれば、別に石油から作られていても良いのですが、プラスチックはひと目でバイオマスなのか、石油合成なのか生分解するものなのか判断できないこともあり、ゴミとして収集されたとき、どう処理していいかわからないことが最大の問題でもあるので、それならば、燃やしたとしても、さらに言えば、例え人間がポイ捨てし海に流れついたとしても対応できる生分解性バイオマスプラスチックが良いのではないかと研究を進めています」

自然界にあるものを
破壊ではなく変換するという発想

岩田教授がプラスチックの研究を志す前は、農学部の学生として過ごし、そんな出自が現在のお考えにつながっているそうです。「木材のセルロースという成分の構造を生かしたまま、新しい材料を作る研究をしていました。農学部は自然にあるものを、まずゆっくり見るわけです。豚や魚を殺すのではなくて、ちょっと遺伝子を変えたり品種を変えたり、ゆっくりと変えていこうとするのが農学という学問なんです。

今は植物油や糖など、自然にあるものを用いて、少し科学的に変換することで、自然の構造を残しながらプラスチックを作るということをやっているのがバイオマスプラスチックの研究です。これまで一般的に流通しているプラスチックとは、石油からとれる成分を使って、自然界にない全く新しい構造のものです。したがってゴミとなって地球上に溢れると、自然が処理できず、環境を害してしまうものとなってしまった時代だからこそ求められているものだとも思います」

人とプラスチックの共存のための
生分解性プラスチック

また、生分解性プラスチックの研究を進めた契機を尋ねると「まずプラスチックが悪いわけじゃないのです。プラスチックを悪者みたいにいう人がいますけど、携帯電話や冷蔵庫、マスクにおむつなど、あらゆるものにプラスチックは使われています。だからこそ、全部やめて、江戸時代に戻るわけにはいかないと僕は思っています。プラスチックと人間は、共存しなきゃいけないし、賢く使わなきゃいけない。そのときにどうするか考えなきゃいけない、それがサスティナブル。プラスチックの問題においてゼロイチ、つまりプラスチックを完全になくすなどの議論をしたらダメなんです。
例え生分解であっても、分解するのに時間はかかるのです。でも、今のプラスチックはこのままだったら100年後も海の底にゴミとして存在してしまうわけだから、少しでも減らせた方がいいに決まっています。だからこそ、今、生分解性プラスチックの研究を進める必要があるんだと思います」。

自然からつくられるものは自然の循環サイクルに取り込まれる、という法則に応じて研究を進めているバイオマスプラスチック。例え人間の倫理観の問題であっても現状起きている問題に対応し研究を進めている生分解性プラスチック。この2つのプラスチックの融合が、世の中に広がれば、と願うばかりではありますが、おそらく生分解性バイオマスプラスチックの研究が進んだとしても、すべての地球環境問題が解決するとはならないでしょう。なぜなら、どのプラスチックを選択するか、プラスチックとどう付き合うのか、つまり結局は、扱う人間自体の問題であるからです。

PROFILE

岩田忠久さん

1966年、広島県大竹市生まれ・山口県岩国市育ち。東京大学大学院農学生命科学研究科(農学部)教授。
専門は高分子材料学、生分解性バイオマスプラスチック、高分子構造学。特に新規高性能バイオマスプラスチックおよび生分解性プラスチックの開発で顕著な業績をあげている。

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BOTANISTブランドキャンペーン第4弾の動画のテーマは、「SUSTAINABILITY(持続可能性)」。
昨今⼤きな課題となっている「プラスチック問題」を⼀例に、これからの時代をより豊かにするための⽅法を探ります。