自然の恵み、バーチウォーター | ボタニカルライフスタイルマガジン - BOTANIST Journal

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LIFESTYLE 06

自然の恵み、バーチウォーター

北国の平原に並び立つ、白い樹皮を持つほっそりとした白樺の木。その樹液は、厳しい冬を越えて春、一斉に新緑を芽吹かせるための豊かな栄養を蓄えています。神秘的な自然の恵を、私たち人間も昔から分け与えてもらってきました。

バーチウォーターとは

この頃よく耳にする「バーチウォーター」。ホワイトバーチウォーターとも呼ばれ、その名の通り白樺の樹液のことです。

白樺は、ロシアや北欧では、昔から最も神聖な木のひとつとされてきました。 樹液は、飲み物やセルフケアに、また髪を洗ったり肌に塗ったりと美容にも用いられてきました。そのため「森の看護婦」、「母なる樹」、「生命の水」などと称されます。「飲む化粧水」という異名もしばしば聞きます。
日本でも、美しい白樺並木が有名な北海道では、アイヌ語で「カンバの木」といい、正式な日本名は「シラカンバ」です。地元では、樹液に栄養があり肌がしっとりするとして昔から飲まれたり料理にも使われてきたのですが、長い間、広くは知られてきませんでした。

その理由は、バーチウォーターの希少性にあります。

春先の1ヶ月間にしか採取できない貴重な樹液

冬から春へと移ろう季節、白樺は、新緑を芽吹かせるために、地中深く張った根から必要な栄養を選び取って吸い上げ、幹や枝の末端へと行き渡らせます。その豊富な栄養を含む水分=樹液が、バーチウォーターです。

バーチウォーターは、新緑の葉が現れる前、樹液が集中的に木の内部を移動する早春のひと月間だけ採取が可能です。
幹に穴を開けて、そこにチューブや小枝を挿すことで流れ出てくる樹液を容器に受けて採取します。
新鮮な樹液は、ほのかな甘味のある無色透明な液体で、人々は「春のジュース」として楽しみ、赤ちゃんの母乳以外の最初の栄養としても重宝されてきました。でも、緑の葉が現れてからは苦くて飲めなくなり、春が終わると樹液はぴったりと出なくなってしまいます。採取しても気温が高いとすぐに劣化してしまうため、長い年月、地域も季節も生息地限定のとても貴重な自然から贈り物だったのです。

歴史的にみると、東欧諸国では洗髪や皮膚を保護するためにバーチウォーターがよく使われました。フランスでは、冬から春の変わり目に体をリフレッシュする習慣があり、バーチウォーターはファスティングなどに用いられてきました。

驚異的に豊かな栄養素を含むバーチウォーター

バーチウォーターには、タンパク質、グルタミン酸をはじめ17種類ものアミノ酸、カルシウム、マグネシムなどの7種のミネラル、糖分など人の体にも必要な栄養成分が含まれることが明らかになりました。最近では抗酸化物質が認められたことにも注目が集まっています。
こうした成分は、肌や頭皮を保湿します。スキンケアでは年齢肌に潤いやハリを与えるエイジングケア化粧品の成分の常連です。また、弱酸性のアミノ酸成分は髪に潤いを与えて艶やかに、豊富なミネラルは髪をしなやかで健やかにすることも知られています。

つまり飲んでも、肌に塗っても良い、天然の優れた高機能ウォーターであることがわかり、さらに保存や加工技術の発達によって、ドリンクや化粧品材料として商品化され、世界中で人気が高まったのです。

バーチウォーターは生命の水

バーチウォーターの採取は、今も白樺の幹に穴を開けて行われます。昔と同じように1年に1度だけ、直径1、2cmほどの穴をひとつ開ける程度であれば、樹液を採取し続けても、木の成長には影響がないことが確かめられているそうです。採取後は木へのダメージを最小限にするために、穴は補修されます。
ですが、幹を何度も叩いたりより大きな傷をつけることは、木の病気や腐朽につながりかねないため、現代でも伝統的な採取方法が推奨されています。
トレンドトピックにも度々登場し、肌や髪の美しさへの効果が高いバーチウォーターですが、それはまさに植物が次の季節を生き繋いでいくための生命の水。
私たち人間にも、その恩恵を分け与えてくれているのだと実感します。サスティナブルに植物の恵と共存していくためには、そんな意識も大切にしたいものです。

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