LIFE STYLE
植物と共に生きるとは。映画『ボタニスト 植物を愛する少年』で描かれる植物と人の関係性
2026.05.12
2025年に第75回ベルリン国際映画祭をはじめ、世界各国の映画祭で受賞を果たした中国映画『ボタニスト 植物を愛する少年』が、2026年5月15日(金)より日本公開決定。「植物と共に生きる」をコンセプトとするBOTANISTの想いともリンクする本作について、監督へのインタビューも交えてご紹介します。
目次
映画『ボタニスト 植物を愛する少年』とは
『ボタニスト 植物を愛する少年』は、2025年に中国で制作された長編映画。都市から隔絶された中国西北部・新疆(しんきょう)の草原を舞台に、自然との対話、記憶の循環、そして成長の瞬間を詩的に描き出す、ジン・イー監督の長編デビュー作です。
監督が自身の故郷である新疆ウイグル自治区の精神的風景と幼少期の記憶を出発点に、マジカルリアリズムを織り交ぜて構築した独自の映像世界で魅せる本作は、中国インディペンデント映画の新たな潮流を感じさせる作品として世界が注目。第75回ベルリン国際映画祭 ジェネレーションKplus部門 国際審査員グランプリをはじめ、世界13の国際映画祭で公式上映され、計12の賞に輝きました。
そして2026年5月15日(金)より、日本での劇場公開が始まります。

植物が静かに寄り添う、物語のあらすじ
主人公は、中国・新疆北部の草原地帯にある小さな村で暮らす、カザフ族の少年アルシン。彼は周囲から少し距離を置き、植物を観察し記録することに日々の時間を費やしていることから、誰ともなく「植物学者(ボタニスト)」と呼ばれています。彼にとって植物は単なる自然ではなく、失踪した叔父から教わった世界観そのものです。

そんなある日、村に漢民族の少女メイユーがやって来ます。明るく自由な彼女の存在は、アルシンの静かな日常に変化をもたらすことに。二人は草原を歩き、植物を探し、言葉にならない緩やかで暖かな時間を過ごします。やがて彼らの関係は友情から、初恋とも呼べる微妙な距離へと変化。しかし、彼らを取り巻く世界もまた刻々と移り変わり、都市からの影響、近代化の気配、そして別れの予感が忍び寄ります。

一方、作中では詩を語る馬、根を離れて歩き出す木、祖先の記憶を宿すかのような植物なども登場。現実と幻想が交錯する中で、アルシンは自分が何を探しているのかを少しずつ知り始めるのです。それは失われた誰かではなく、時間そのものなのかもしれません。

ジン・イー監督が語る、映画の中の植物の力
今回、日本公開を記念して監督へのインタビューを実施。「植物と共に生きる」をブランドコンセプトに掲げるBOTANISTならではの視点で、本作において監督が植物に込めた想いを聞きました。

Q:本作ではなぜ「植物を愛する少年」を主人公に選んだのですか?
A:新疆で育った自身の経験、そしてカザフ族の遊牧文化と自然との密接な関係に由来しています。また、植物研究に携わる友人から大きな影響を受け、人と植物との関係について考えるようになりました。
Q:監督自身も幼い頃「植物を愛する少年」だったのですか?
A:私は幼い頃から新疆の村で育ち、自然と非常に近い環境にいました。子どもの頃はよく屋根の上でぼんやり過ごし、向かいの山に自分がいる姿を想像していました。一見退屈に思えるその時間が、今では自分自身を支える力になっています。

Q:作品の中で植物にどのような意味や表現意図を込めましたか?
A:植物は単なる背景ではなく、人や物と対等に存在するものです。感情を宿す器であり、時間の証人でもあります。登場人物たちの精神世界を映し出し、異なる文化が異なる植物のように調和しながら共生できることも象徴しています。
Q:植物や自然を描くうえで、特にこだわった点や工夫した点はありますか?
A:実景撮影、自然光、そして非職業俳優を用いることで、リアルな質感を生み出しました。4:3の画角を使って垂直方向の広がりを強調し、遠景の全景ショットと極端なクローズアップを組み合わせることで、「観察」と「没入」の対比を作っています。また、光や夢の表現を通して植物を“生きた存在”として描き、少年の内面世界を外在化しました。

Q:主人公アルシンは植物を採取し標本を作っていますが、監督にとって標本はどのような意味を持っていますか?
A:主人公アルシンにとって、植物標本を作ることは、記憶を保存し、感情とのつながりをつかみ留める行為です。私にとって映画を作ることも標本づくりに似ています。大切な時間や感情を封じ込め、残していく行為だからです。
Q:植物を標本にし、“保存する”という行為にはどのような意味があると思いますか?
A:それは忘却に抗う試みだと思います。映画が時間を記録するように、標本もまた生命のある瞬間を留め、消えてしまうかもしれない美しさや記憶を残そうとするものです。
Q:植物と記憶にはどのような関係があると思いますか?
A:植物は記憶の媒体です。静かに成長し、枯れ、再び芽吹く姿は、忘れられたり心の奥にしまわれた記憶によく似ています。ある瞬間にふと呼び起こされ、過去と現在をつなぐ存在です。

Q:主人公アルシンは植物から何を学んだと思いますか?
A:生命のしなやかな強さと、別れに向き合う姿勢です。変えられない別れに直面しても、自分にできることを果たし、しっかりと根を張って生きていくことを学んだと思います。
Q:植物を観察し、その名前を知ることにはどのような意味があると考えますか?
A:ジャン=ジャック・ルソーは「名前を知らなくても植物学者になれる」と語っています。命名や分類は保存のために必要なこともありますが、違いを強調しすぎると壁を作ってしまうこともあります。私は名前を超えて、植物そのものの美しさや生命のあり方を感じ、多様な世界の共存を理解してほしいと思っています。
植物と共に生きるということ
幼い頃から植物に親しみ、本作において独自の感性で植物の美しさや秘めた力、そして植物と人との関係性を描き出した、ジン・イー監督。
改めて、人間にとって植物はどのような存在であるかを問うと、「生命の示唆を与えてくれる存在であり、自然と共生するためのパートナー」だと答えます。
また、監督自身にとっての植物は、「故郷や子ども時代、記憶をつなぐ存在であり、異なる環境の中でも力強く生きようとする生命力の象徴」だと言います。
そして、「私にとって植物の魅力は、『干渉しない癒やし』にある」とも。「植物はただそこに存在し、何かを求めることも、評価することもありません。その静かで揺るがない生命力こそが、私と植物との関係性です。所有するのではなく、それぞれが自分の軌道を生きながら、静かに互いへ力を与え合っているのだと思います」と監督は話します。

BOTANISTが大切にしている「植物と共に生きる」という考え方も、こうした監督が想い描く植物と人の関係性に深く通じています。
植物は自ら生き抜く力、美しさを持ち、この世界にさまざまな恵みを与えてくれるもの。単なる背景ではなく人と同じ世界に存在し、過去から現在まで同じ時間を共有し、共に影響しながら生きてきました。そして、この先の未来も変わらず共存し、静かに、けれども確かに影響し合って生きていくのです。
過去から現在、そして未来へと、植物と人が共に生きるとはどういうことなのか。改めて向き合った時、映画『ボタニスト 植物を愛する少年』が、その在り方を示してくれています。
BOTANIST SANTALをプレゼント
2026年5月15日(金)より日本公開となる映画『ボタニスト 植物を愛する少年』。
これを記念し、下記の映画館で公開初日となる2026年5月15日(金)限定、先着順で「SANTAL(サンタル) リペア オイルイン サシェ」をプレゼントします。ぜひ劇場で、本作の幻想的な世界、植物の美しさに触れてください。
<対象の映画館>
ヒューマントラストシネマ有楽町/シネマート新宿/アップリンク吉祥寺/横浜シネマ・ジャック&ベティ/あつぎのえいがかんkiki/小山シネマロブレ/ミッドランドシネマ名古屋空港/テアトル梅田/シネ・リーブル神戸
【詳しくはこちら】
■映画『ボタニスト 植物を愛する少年』公式サイト
https://www.reallylikefilms.com/botanist