BOTANIST Journal 植物と共に生きる。

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PEOPLE 16

オリーブの持つ力

植物から抽出される成分には、私たち人間をも潤す豊かな力が眠っています。そんな成分の効能もさることながら、ご自身と植物を介したコミュニケーションを模索するヴェルソーのディレクター、村田美沙さんをお迎えして、オリーブが運んできてくれた力についてお話を聞いてきました。

オリーブとともに生きる暮らし

オリーブには、ビタミンEが豊富に含まれ、オレイン酸、さらにはスクワレンも抽出することができます。そのため、食用としても広く愛されていますが、肌や髪に直接使用することでも、潤いを与えてくれる植物でもあります。村田美沙さんは、幼少期から悩まされている肌トラブルに向き合う日々で、植物療法に出会ったそうです。植物から抽出された成分が持つ魅力を知り、自らも植物療法士の資格をとるために勉強をはじめていた際、フランスにあるオリーブを育てていたお家で過ごすことを決意したそうです。 「私が学んでいた植物療法のルーツがフランスにあったということと、テキストだけじゃわからない、実際に植物とともに生きる暮らしを体感したくて、オリーブの木を30本くらい育てながらB&Bとしての宿舎をやられている宿に、2ヶ月ほど滞在しました。その中で、畑のお手伝いをしながら生活したのですが、『本当にオリーブとともに生きてるんだな』っていうのを実感できて。もちろん、目の前に広がる風景からは、風にそよぐ葉っぱや、風が運んでくれる香り、毎日食卓に並ぶオリーブやオリーブオイルに囲まれた日常は貴重なものでした。中でも面白いなって感じたのが、収穫したオリーブを街の中にある工場に持っていくのですが、街のみんなが育てたオリーブもその共有の圧搾する工場には持ち込まれていて、それによってできたオリーブオイルを食卓などで使っていたんです。それが、実際に植物のある生活っていうのを物語ってるなって、すごく感じて。」

自分たちで考え自分たちで選択する暮らし

植物のある暮らしを求めてフランスのオリーブ農園を訪れた村田さんは、そこでの暮らしで、現在の活動につながるさらに貴重な体験をされたそうです。「なんでも自分たちで作り、あるものでなんとかしている生活が根付いていて。夏場、オリーブ畑で作業をしていて虫に刺されたとき、日本だと市販のものを買い使用するのが当たり前だけど、ドラッグストアにいき虫刺されに効能がある精油を選んで自分たちでブレンドしてオリジナルの虫除けオイルを作って使用していたんです。それまでの日本での生活では、買って済ませていたことを、自分たちで考え、自分に必要なものを選択しながら、生活しているのがすごくよくて。そうやってフランスを旅して気づいた思考を、今の日本でのセルフケアに、もうちょっと持って来れないかなって。」

日本で育った植物とともにする日本の暮らし

フランスへの旅によって得た思考を日本でも実践できないかと、帰国後は、全国の農家さんをまわり、日本独自の植物のある暮らしを模索しはじめたそうです。「日本ではオリーブの木を身近に感じられないですけど、梅の木がそれに近い存在かなって。梅の実がなったら梅酒や梅干しを作ったりしますよね。その感じが、フランスでのオリーブに近いなって。わざわざフランスのハーブなどを輸入して使うのは違和感があって、日本では日本で育った植物とともに生活したいなって思ったときに、日本全国の農家さんを訪ね歩き始めたのがヴェルソーの始まりなんです。群馬の高原地帯でカモミールを育てている農家さんを、最初に訪れたのですが、寒暖差があったり厳しい環境で育つカモミールは、同じカモミールでも美味しいってことをすごく実感しました。そうやって土地の風土によって、自然の持つキャラクターが細かく分布されていて、さらには生産者さんの考え方とか、実際に足を踏み入れてみないとわからないことを、ヴェルソーでの活動でしっかり届けていきたいなって、ワークショップを開いたり、ハーブティーを作る活動をはじめました」

私と植物とのコミュニケーション

日本で育った植物とともに暮らし、そんな植物を使ったハーブティーや、そこにまつわるストーリーを伝える活動をされている村田さん。「日本やアジア由来のハーブもいくつかあって、沖縄に月桃っていう薬草があるのですが、風邪をひいたときヨーロッパだとジャーマンカモミールのお茶を飲んだりするのがポピュラーなのですが、沖縄では古くから月桃が飲まれてきていて、味も美味しくて好きなんです。また、小豆島で育ったオリーブの葉っぱを細かくし煎じてお茶にして飲むのも、オリーブへの思い入れも特に強いっていうのもあるのですが、甘くて美味しくて好きなんです。オリーブの葉には抗菌作用がある成分が含まれていて、体を整える効果があるのですが、そうやって日々、自分自身の体と向き合いながら、今何が必要なのか自問自答しながら、植物とコミュニケーションをとりながら送る生活を、もっと広めていけたらと思っています。」 植物療法士よりもカジュアルに日常の中に植物が溶け込んだ暮らしを提案したいという思いから、自らの肩書をハーバルライフスタイリストと語ってくれました。ご自身に芽生えた感覚を、既存の言葉に当てはめるのではなく、自らが作り出した言葉に置き換え、少し照れながらもお話くださいました。ご自身の体、さらにはご自身自身と向き合い、どんな植物と暮らすのか、みなさんはどんな植物との暮らしをされているのでしょうか?

PROFILE

村田美沙

植物を通じて体験した物事を、ハーブティーなどの商品や、ワークショップや講演会などで伝えるブランド、Verseau(ヴェルソー)のディレクターであり、ハーバルライフスタイリスト/植物療法士。また、植物を介したコミュニケーションをテーマにアーティストとしても活動する。

Youtubeにも同時公開しておりますので、動画でもお楽しみいただけます。