BOTANIST Journal 植物と共に生きる。

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花の危機を救うために。私たちができるワンアクション

この夏、フラワーロス削減のためにBOTANISTが行った「SAVE THE FLOWERS」キャンペーン。皆様の賛同を得て、581本のお花を購入・配布しました。大盛況のうちに終了した本キャンペーンについて関係スタッフが振り返り、実施した意義や今後の展望などを語ります。

花を、生産者を救いたい
キャンペーンに込めた想い

2020年7月22日~8月23日の期間、BOTANISTは「SAVE THE FLOWERS」と題したキャンペーンを展開しました。これは、新型コロナウイルスの影響による需要の低迷や値崩れで厳しい状況にある生産者様からお花を購入し、フラワーロスの削減に繋げようという企画です。
まずは一般ユーザーの方に向けて、TwitterもしくはInstagramでBOTANISTをフォローし、Twitterなら対象ツイートをリツイート、Instagramなら植物や花の写真に「#共に生きる_BOTANIST」を付けて投稿いただくよう募集。参加者の数に応じてBOTANISTがフラワーロスの危機にあるお花を購入し、フラッグシップショップ「BOTANIST Tokyo」にてテイクフリーで配布する、という内容でした。

本キャンペーンの企画・運営を担当したBOTANISTの東野藍子は、「私たちは、コロナ禍でもお客様の手にお花が届くお手伝いをすることで、生産者やフラワーショップなどお花や植物に関わる全ての人々を少しでも笑顔にしたいと考えました」と話します。
また、SNSを活用したユーザー参加型企画にしたのもポイント。「ただ『お花を配ります』と告知して配布するだけではあまり意味がないというか。リツートや投稿など、何かしらのアクションをすることでフラワーロスの問題を自分事として考え、一緒にロス削減の活動にご参加いただくような形にしたいという思いがありました」。

お互いの理念に共鳴し
理想的なタッグが実現

お花の手配と店頭ディスプレイは、東京・目黒にフラワーショップを構える株式会社BOTANICさんへ依頼。東野曰く、「BOTANICさんは『花や植物に関わる全ての人々を幸せにする』というミッションを掲げられています。実際、ただお花を販売するだけではなく、生産者の方々の紹介や、季節のお花の扱い方や楽しみ方といった情報発信に力を入れるなど、お花に関わる様々なことに対して理解が深まるような取り組みをされているんですよね。こういった理念に深く共感し、ぜひ本キャンペーンにご協力いただきたいとお願いしました」。

対してBOTANIC代表の上甲友規さんは、当時をこう振り返ります。「私たちも新型コロナウイルスの影響で1ヵ月以上休業した店舗もありますし、営業を再開しても何かと制限が多い中で、これまで通りにはいかないことが多くありました。また、イベント装花などのご依頼も減少。お花の仕入れ先である生産者の方々からも、この先どうすれば良いんだろうというご相談を多く受けていました。そういった最中にBOTANISTさんにお声掛けいただいて、これは生産者の方々とお客様を結びつける良いきっかけになると感じました」。

2種類の花が持つ魅力と
秘められたメッセージ

今回選ばれたお花は2種類。静岡県産のガーベラと、沖縄県産のクルクマです。その理由について上甲さんは、「信頼できる生産者さんであること、そしてお花自体の魅力が高いことを基準に選びました。また、せっかくの機会なので、バラのように誰もが知っているような分かりやすいものではないけれど、魅力的なお花というのもピックアップしたくて。クルクマはパッと見がいわゆるお花っぽくはないので『皆様はどう感じられるかな?』とも思いましたが、『ずらっと並んでいる姿が可愛らしい』と、東野さんはじめ皆様にも好評で良かったです。あとは持ち帰って長く楽しめるよう、比較的丈夫で長持ちする品種という点も考慮しました」。

しかもこの2種類のお花、偶然にもそれぞれの花言葉が、今回の企画にぴったりだったのだとか。「ガーベラには『希望』」、クルクマには『忍耐』という花言葉があります。不安な日々ながら『未来への希望を持って、今を耐えよう』というメッセージを持つお花だと知って、運命的な出会いを感じましたね」と東野は言います。

一方、選ばれた生産者の方はどう感じられたのでしょうか。ガーベラの生産者である、ADORE FLOWCA(アドアーフローカ)の山本ゆかりさんは、「春には多くのお花が廃棄となる中、まるで自分たちが世の中に拒絶されているようで、『もうお花っていらないものなのかな…』と気力を失っていました。なかなか収束が見えない中で初夏を迎え、次のシーズンに向けて植え付けをすべきかどうかも悩みましたし、海外から苗が届かないといった状況もあったので、『このまま花農家ができなくなるのかな…』と不安ばかりが募っていました」と当時の心境を振り返ります。
「でも、そういった時にBOTANICさんからご連絡をいただいて。私たち生産者の声をお花と一緒に皆様に届けてくださるということで、とても有難く感じました。今後の大きな励みになる、嬉しいお誘いでしたね」。
また、出荷するお花については「手にした方が絶対にがっかりしないようなものを、と考えました。テイクフリーだからといって、家に持ち帰ってすぐに枯れてしまったというのは避けたいなと。しっかりと美しく、できるだけ長く咲き続けるよう、一番良い状態のものをお届けするように努めました」。

SNSを通して感じた
確かな手ごたえを糧に

キャンペーンがスタートして以降、東野と上甲さんは日々アップされるSNSをチェック。東野は「多くのお客様から賛同や激励のコメントをいただきました。また、皆さん様々な形で『植物と共に生きる』というライフスタイルを実践し、『お花が一輪あるだけでも心が潤います』といった声が届くなど、植物のある暮らしの素晴らしさを体感いただけているのを知ることができて、とても嬉しく思いました」と言います。

上甲さんも「改めてお花に興味を持っていただくきっかけになったと思います。花屋に並ぶお花にはそれぞれ大切に育てている方がいて、今そういった生産者の方々がコロナ禍の影響を受けていることも知っていただけた。その上で暮らしの中にお花を取り入れてくださっている様子を拝見できて、大きな喜びを感じました」と笑顔。

こうして、7月22日~8月23日の募集期間中、お客様から多くのアクション(Twitterのリツイート、Instagramの投稿)をいただいたことにより、581本のお花の購入が決まりました。

予想以上のスピードで
花が多くの人々を笑顔に

皆様のアクションに応じて購入した581本のお花は、2020年9月5日にBOTANIST Tokyoで配布。想定よりも多くの方にお越しいただき、用意したお花は早々に配り終えることとなりました。その後は、店頭ディスプレイに使用していたお花の配布に切り替え。これらも全てお客様の手に渡り、トータルで1000本程度のお花を配ることができました。
これには上甲さんも驚いたようで、「通常ならば、イベントの最中にディスプレイを崩すなんて絶対NGですよね。でも、今回はフラワーロスの削減がテーマということで、ご用意した全てのお花を活かしていただけて感動しました」。

大盛況の当日を振り返り、「本当にお花のパワーに包まれる1日でした。事前にキャンペーンのことを知ってお越しいただいた方はもちろん、当日たまたまお店の前を通って足を止めてくださったお客様も多かったです。『良い取り組みですね』と声をかけられたり、一度通り過ぎて用事を済ませてからわざわざ戻ってきてくださる方もいたり。男女問わず、小さなお子様も含めて、皆さん楽しそうにお花を選んで持ち帰ってくださるのを見て、お花は人を笑顔にする、幸せにする存在なんだ! と実感しました」と東野。

上甲さんも「意外と男性の方、若い方も多く、想像以上の影響力を感じました。私たちは普段から、年齢や性別問わずお花のある暮らしを送っていただきたいと考えています。『花屋って何だか入りづらいな』と思ってらっしゃるような方でも、今回キャンペーンを通してふいにお花を手にされたことで、ちょっと敷居が下がるというか。今後の良いきっかけとなっていれば嬉しいですね」と話します。

この成功を踏まえて
今後もさらなる展開を

最後に、本キャンペーンを終えて東野は、「お花の力はすごい! というのを改めて実感しました。花は一輪だけでも人の気持ちを変える力があるというのを目の当たりにして、『植物と共に生きる』というBOTANISTの提案は間違っていないのだと自信になりました」と言います。「また、今回は本数で見ると小さな取り組みに過ぎませんが、お客様にお花と生産者の方々の現状を伝え、フラワーロスが少しでも減るよう、皆様にお花を届けるお手伝いをすることができたことは確かです。まずは、私たちにできることから。これからも少しずつこういった活動を積み重ねて、未来に繋げていきたいです」。

上甲さんは「今後も、お花や植物に対するニーズの変化はより一層続いていくと思うんです。以前よりも人が集まるイベントは減るでしょうし、おうち時間は増えるでしょうし。そういった変化に対応して、これからはますます、お花のある暮らしは素敵なことだと伝えていく必要があると思っていて。BOTANICとしてはもっとお客様に寄り添い、お花のある暮らしをサポートする、新たなサービスを展開していきたいと考えています」と話します。
「一方で、私たちだけでできることは限られています。だからこそ、こうしてBOTANISTさんのようなブランドと一緒にボタニカルライフスタイルの提案ができると、私たち花屋も、生産者の方々も、より発展的な動きができて嬉しいので。ぜひまた何かご一緒できればと思っています」。

BOTANISTとしても、『植物と共に生きる』をテーマに、植物のある暮らしのご提案や、植物の保全活動など、植物と人が共存するための取り組みは継続して行っていきたいと考えています。また違う形で今回のキャンペーンのような取り組みを行う際には、ぜひ皆様ご参加ください。

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