BOTANIST Journal 植物と共に生きる。

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LIFESTYLE 18

日常に取り入れたい、スパイス美容

インドやスリランカの伝統医学・アーユルヴェーダでは、ハーブやスパイスといった植物を、トリートメントやコスメで肌から取り入れるケアが一般的に行われています。アーユルヴェーダセラピストとして活躍するアカリ・リッピーさんにその活用方法や効果について伺いました。

ターメリックを使用したスキンケアがトレンドに

スパイスは植物の実や種、花、根、樹皮などを乾燥させたもので、スパイスカレーに代表されるように料理のアクセントとして使われるのが一般的です。それだけでなく世界最古の医学といわれるアーユルヴェーダでは、スキンケアやヘアケアのアイテムとしてスパイスが用いられています。そういったスパイスの力に注目が集まり、欧米ではターメリックなどを配合したコスメが、新たな美容のトレンドとして続々と登場。その効果についてアーユルヴェーダ・セラピストのアカリ・リッピーさんに伺いました。「ターメリックには美白効果や肌の老化の原因となる活性酸素を抑えるアンチエイジング効果があります。インドやスリランカのアーユルヴェーダの施設では、ターメリックやひよこ豆のパウダーをブレンドした顔や髪につける美容パックがトリートメントで使用され、家庭でも日常のセルフケアとしてターメリックをヨーグルトと混ぜて美容パックにする方法がよく使われます。抗菌作用もあるので蜂蜜にターメリックを混ぜたものを虫刺されや軽い切り傷に塗るなど、とにかくターメリックは肌トラブルを解消してくれるスパイスとして広く活用されています」

自分の体質や症状に合ったスパイスで体を潤す

ほかにも、クローブは強力な抗菌、抗炎症作用、また髪の成長に必要な多くの栄養素が含まれており、紫外線によるダメージを抑制してくれるため、髪に良いスパイスとしてヘアケアや育毛剤に使われています。日本でも、江戸時代には髪を整えるためのびんつけ油として丁子(クローブ)油が使われてきた歴史がありました。スターアニスに含まれる成分は女性ホルモン機能を調節する効果があるとされ、髪や肌のうるおいを保つほか母乳の出をよくする働きも。さらにアカリさんは、「おばあちゃんの知恵袋」のような家庭医学にも、スパイスが欠かせないといいます。「スリランカでは、クローブを浸けたココナッツのお酒を常備し、お腹が痛くなったときに子どもに飲ませるといった使い方をしています。ちょっと風邪っぽいかなというときには、コップ一杯の水にターメリックを小さじ1/2杯、塩を2、3つまみ入れたターメリック水でうがいをすると、喉の違和感が楽になります。鼻づまりにはしょうがを小鍋でボイルしてその蒸気を鼻から吸って口から出すのがおすすめです」

アーユルヴェーダではスパイスやハーブは薬のひとつ

アーユルヴェーダではスパイスやハーブを口にすることと同じく、肌から吸収させることも重要視しているといいます。アーユルヴェーダの病院には、古くから外科や内科と並んで若返り科があり、オイルトリートメントやスキンケアが治療の一環として行われているのだとか。「口から体内に入れたものはある程度、消化器官で代謝・解毒されますが、オイルは粒子が非常に細かいため吸収がよく、肌から入れるとダイレクトに血管に入ります。より強く作用するので、症状に合ったスパイスやハーブをオイルにブレンドして肌や頭皮を直接マッサージします」

スパイスやハーブで植物の力を体の中からも外からも取り入れる

日本でもよく知られる、オイルを用いたアーユルヴェーダの伝統的なヘッドマッサージでは、抜け毛やアンチエイジング、気分をすっきりさせたい、頭痛を緩和したいなど、体質や症状に合わせてスパイスやハーブを使い分けるそう。美容はもちろん、神経系の働きを整えたり頭痛を和らげるリラックス効果もあるといいます。「アーユルヴェーダではスパイスとハーブの区別はなく、植物全般を薬として扱います。インドやスリランカでは内服薬として口にすることはもちろんですが、肌から吸収させることも医療行為と認められ、公的保険も適用されます。それくらい植物の持つ力は強く、美しい心や体には欠かせないもの。日本でももっと自分に合ったスパイスやハーブを、体の中からも外からも取り入れるという感覚が広まればいいなと思います」

PROFILE

アカリ・リッピー

大手IT企業で激務をこなしていたが、ストレスを抱える自分を前向きに変えたいと様々な美容法に挑戦するも失敗し、アーユルヴェーダにいきつく。実践することで仕事もプライベートも好転し、本格的に学ぶように。単身スリランカにわたり、ホテルのセラピストとして勤務後、帰国。日常で簡単にできるアーユルヴェーダセルフケアを伝えている。