日常に彩を添えるよう
ほのかに灯るキャンドルの魅力
独学でキャンドル作りを学び、2008年にキャンドルブランド「Ballare(バラレ)」を立ち上げた兼島麻里さん。イタリア語で「踊る」という意味のブランド名には、「作品を見た人や手に取った人が心躍るようなキャンドルを作り続けたい」という想いが込められています。
キャンドルは小さな灯りで場の雰囲気をがらりと変えられるもの。「『毎日キャンドルを灯す時間を楽しみにしています』など、Ballareのキャンドルで誰かの日常が少しでも豊かになっているという声を聞くと嬉しく思います。まだまだキャンドルは特別な日に灯すものという意識の方も多いかもしれませんが、もっと身近なものとして、日常的に楽しんでいただきたいです」と兼島さんは話します。
さらに、「キャンドルは夜に灯すイメージが強いと思いますが、意外と早朝に灯すのもおすすめですよ」と兼島さん。1日の始まり、まだ外が薄暗く静寂に包まれた時間帯からキャンドルを灯し、日の出までの間一人静かに過ごすのがとっておきのひとときになっているといいます。
そして日中は、製作に集中。「キャンドル作りは出来上がったパーツを組み合わせるような作業ではなく、材料の配合などを考えてイチから自分の思うように形作っていく作業であることに面白さを感じています。それに、灯す前と後の印象の差をイメージして、『こういう灯り方にしよう』と計算しながら作るのですが、実際に火をつけると『こう灯るんだ!』という思わぬサプライズがあって。次なる創作への原動力になっています」。兼島さん自身、日々キャンドルの魅力に心躍らせているのです。
サスティナブルな未来を照らす
キャンドルの希望の光
「Ballare」では、季節の花材を取り入れたボタニカルキャンドルも多く扱っています。「花や植物はその場にあるだけで日常生活を彩るもので、キャンドルの魅力と似ている部分があると思います。私もキャンドルに取り入れるだけではなく、日常的に家の中に飾って楽しみ、癒されています」と兼島さんは話します。
花材の一部には、花の卸業を営む義父から送られるお手製のドライフラワーも使用。「定期的に素敵な花々が届くのですが、特に父が自宅の庭で育てた野花をドライにしたものが好きです。市販のもののように花びらや葉がきれいに整っていない、自然な形のままドライになった姿がなんとも美しいと感じていて。キャンドルにもできる限り、ありのままの姿の植物を取り入れるようにしています」。
手元の植物は余すところなく活かすのも、兼島さんのモットー。「義父との出会いで生産者の顔が想像できるようになり、大切に育てられた植物を無駄にしたくないという意識が芽生えました。今はキャンドル作りで余った花材や、ドライフラワーを束ねて飾った時に落ちてしまった花や葉っぱのかけらを集めておいて、ある程度たまったらワックスバーにして飾って楽しんでいます」。
さらに最近、より一層無駄をなくしたいという意識から、キャンドル製作時に出るワックスのかけらにも着目。これを素材として、新たに「reborn」というテーマでのキャンドル製作をスタートしました。今まで廃棄していたものに意味を与え、独特な形が印象的な新しいタイプのキャンドルを生み出しているのです。
他にも、キャンドルを販売する際に過剰包装をせず、梱包資材は過去に材料や道具を購入した際に使われていたものを保管しておいて再利用。「プライベートでも捨てる時のことを考えて無駄なものは買わない、エコバッグを持ち歩く、洗剤などは詰め替え用を使うといったことを心がけています。物をたくさん増やす豊かさよりも、今あるものの中で想像力を膨らませ、工夫して豊かな時間を過ごすことを楽しんでいます」。
そしてもちろん、1日のうち少しの時間でも電気を消して、キャンドルの灯りで過ごすことも大切に。「キャンドルは楽しみながらエコにもつながるもの。小さなことでも毎日コツコツと続けることが、環境へのプラスになるのではないでしょうか」と兼島さんは話します。
クリスマスムードを高める
ボタニカルキャンドル作り
日常を豊かに彩り、サスティナブルな暮らしの一歩にもなるキャンドル。今回はBOTANISTのために、クリスマスに向けたキャンドルのオリジナルレシピを考案いただきました。
クリスマスツリーを思わせるヒバの葉を全面にあしらい、表面に粉雪がかかったような表情を出したクリスマスムード高まるデザイン。素敵な仕上がりながら、出来る限り身近な道具を使い、難しい工程を入れずシンプルにすることで、初心者の方でも簡単で作りやすいレシピとなっています。
【材料】
- パラフィンワックス融点58℃・・・300g
- ヒバの葉・・・適量
- 芯・・・約8cm
【道具】
- IH ヒーター
※ホットプレートで代用可 - 鍋
- 計り
- シリコンスプレー
※サラダ油で代用可 - ティッシュペーパー
- アクリル製の型 直径(外寸)8.6cm(内寸)8.2cm×高さ6.3cm
※プラバンを丸めたもので代用可 - クッキングシート
- 泡⽴て器
※割り箸で代用可 - はさみ
- カッター
- スプーン
- ドライヤー
- ⽵串
- 真鍮ブラシ
作り方<下準備>
ワックスを溶かす
パラフィンワックスを鍋に入れ、IHヒーターの弱火~中火で加熱して溶かします。ワックスを溶かす際、直火は危険です。IHヒーターが無い場合はホットプレートの上に鍋を乗せて加熱するか、湯煎で溶かしてください。
芯をコーティングする
芯を8cm程度にカットして、STEP1の溶かしたワックスに数秒浸してから引き上げ、その後、芯についた余分なワックスを拭き取ります。この作業で芯がワックスでコーティングされます。
ヒバをカットする
ヒバの葉をはさみで切り、適当なサイズに整えます。
型にシリコンスプレーをふきかける
型の内側にシリコンスプレーをふきかけ、ティッシュペーパーで軽く拭きます。こうすることで、最後キャンドルが固まった後、型からキャンドルが取り出しやすくなります。シリコンスプレーが無い場合はサラダ油をティッシュペーパーに少量含ませ、型の内側に薄く塗ります。
作り方<デザイン>
ワックスをかき混ぜる
STEP1の溶かしたワックスの表面にうっすらと膜が張ったら、クリーミーな質感になるまで泡立て器で混ぜます。
型の内側にワックスを塗る
かき混ぜたワックスをスプーンの裏を使い、型の内側(全体の1/5程度の部分)に薄く伸ばしながら塗ります。
ヒバをセッティングする
ワックスを塗った部分にお好みの向きでヒバの葉を貼り付けます。ワックスが硬くなる前に手早く行いましょう。その後、STEP6・7の作業を繰り返し型の内側全体にヒバの葉を配置します。
ドライヤーで温めて固定する
型の内側全体をドライヤーで温め、貼り付けた植物を再度指でしっかりと押して固定します。
余分なワックスをカットする
型の上下にはみ出したワックスを淵に沿ってカッターやはさみでカットし、取り除きます。
作り方<固める~仕上げ>
鍋に残ったワックスを型に入れる
平らな場所にクッキングシートを敷いて型を置きます。その中へ、鍋に残った少し硬くなったワックスをスプーンで入れます。満杯よりもやや少ない程度(上部の高さ5mm分ぐらい余白を残すイメージ)に留めてください。
残りのワックスを再び温めて泡立てる
鍋の中の残りのワックスを再度IHヒーターで加熱。溶けてからしばらく置き、ワックスの表面にうっすらと膜が張ったら、クリーミーな質感になるまで泡立て器で混ぜます。
クリーミーな質感のワックスを上部に塗る
上部に残した高さ5mm程度の余白に、STEP11で作ったクリーミーな質感のワックスを塗ります。スプーンの裏を使い、擦れたようなニュアンスを出しながら塗るのがポイントです。
中央に芯をさす
ワックスがある程度固まってきたら、中央に竹串で穴を開けて芯をさします。
冷やして固める
そのまま冷蔵庫に入れて冷やします。設定温度にもよりますが、3時間程で固まります。
側面に表情をつける
キャンドルが固まったら型から取り出します。仕上げにキャンドル本体の側面を真鍮ブラシで優しく叩き、粉がかったような表情をつけたら完成です。
初めてでも簡単に、素敵に作れるボタニカルキャンドル。おうち時間の楽しみに手作りして、クリスマスムードを高めてみませんか。 今回ご紹介したキャンドルのサイズなら、毎日1時間~1時間半の燃焼で、約半月程度、ロウが溶けて内部にヒバの葉がむき出しになるまでは楽しめます。ぜひ自分のペースで、キャンドルの灯る暮らしを楽しんでください。
♯プロフィール
「Ballare」兼島麻里
東京・世田谷にアトリエを構えるキャンドルブランド「Ballare」オーナー、キャンドル作家。
手に取った人の心が「踊る(=イタリア語でballare)」ようなキャンドルをコンセプトに、自然体の植物を活かしたボタニカルキャンドルをはじめ、オリジナリティ溢れる作品を生み出している。
http://ballare-candle.com