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好きに出会える。心くすぐる古着屋「オーバーラップクロージング」
三軒茶屋駅や下北沢駅から歩いて20分ほど。世田谷区の住宅街にふと現れるのが、アパレルショップ『OVERLAP CLOTHING』です。店内にはカラフルなお洋服や小物がずらりと並び、おしゃれだけど気負わない、やわらかな空気感が漂っています。


「こんにちは〜! どうぞどうぞ、中へ」
迎えてくれたのは、ディレクターの稲葉真理恵さん。はじける笑顔にこちらの緊張はふっと抜けていきます。
『OVERLAP CLOTHING』は、稲葉さんとスタイリストをしている夫・水野遼平さんが夫婦で運営しているお店です。もともとは2020年12月、渋谷区富ヶ谷で複合ショップ『OVERLAP』のアパレルショップとして誕生。2023年4月から世田谷区代沢に移転し、独立店として営業しています。
「私たちが目指しているのは、気取らず誰でも気軽に楽しめるグッドレギュラーな古着屋です。たとえ高価なビンテージじゃなくても、おもしろくて、思わずこれ好きかもってなる古着ってたくさんあるはず。そんな出会いがあるお店にしたいんです。あとキッズサイズの古着に力を入れているのもこだわり! それから、古着があまり得意じゃない方にも訪れてもらえるように、オリジナル商品も販売しています」
アイテムをピックするときに大切にしているのは「自分が本当にほしいと思えるアイテムかどうか」。そんな稲葉さんのセンスとこだわりの詰まった『OVERLAP CLOTHING』には地元のお客様がふらっと訪れるだけでなく、SNSを見て遠方から訪れる人もいるといいます。

バタバタでも笑顔。「飾らない、無理しない」をモットーに子育てを楽しむ
アパレルの仕事に打ち込む一方で、稲葉さんは現在、2児の母。仕事も子育ても夫婦で力を合わせて乗り越えています。
「もう、本当に毎日バタバタです(笑)。家事育児は、夫とできるだけ平等に分担してるんですけど、それでもやっぱり大変……」
稲葉さんは、平日は子どもたちを保育園に預け、朝9時から夕方5時半までお店に立つのが基本。保育園のありがたさを日々実感しているといいます。
「楽しいと思える好きなことを仕事にしているからこそ、バランスが取れているなと思います。本当に保育園には頭が上がりません」
そう言って、ふわっと笑った稲葉さん。「完璧じゃなくていい」「無理しすぎない」。その自然体なスタンスは、まわりの人までホッとさせてくれます。
稲葉さんのInstagramには、そんな等身大のお写真がたくさん投稿されています。子どもを連れてのお散歩、親子お揃いで着たレインコート、帰省するときの車内。どの写真からも気取らないあたたかさがにじみ出ているのです。

稲葉さんのインスタグラムにて公開されているお写真
「子育てでバタバタしてると、ちゃんと撮ろうなんて構えていられなくて(笑)。おのずと気取らない投稿ばかりになってしまいました。でも、だからこそ面白がってもらえているのかな。こんなありのままの私を『いいね』と言ってくれる方がいるのは、やっぱりうれしいですね」
「好きなことを仕事にするのはダメ」。そう考えていた時期も
稲葉さんのキャリアは、意外にも証券会社の営業職からスタートしています。
「東京の大学を卒業後、地元・静岡に戻って就職しました。経済学部出身だったことと、なんとなく両親のそばにいた方がいいかなと、証券会社を選択。でも、毎日が本当にしんどくて。お金は貯まるけど、心は空っぽ。公園でハトを眺めながらぼーっとしちゃうような日もありました。
もともと私は仕事とプライベートは分けたほうがいい、好きなことを仕事にしちゃいけないって思っていたんです。そのほうがバランスがとれるだろうって。でも、どんどん追い詰められていきました」

限界寸前で思い出したのは、昔から好きだった「服」の世界でした。
やっぱり、アパレル業界に入りたい。その一心で稲葉さんは東京の大手アパレル会社に就職。販売員として店頭に立つようになります。
「昔から、服で自分を表現するのがすごく好きだったんです。だから、アパ
次第に先輩や同僚からは「いなちゃん」と呼ばれ、お客さんからも親しまれるショップスタッフに。4年ほど働いた頃、ブランドや商品の魅力を発信する「プレス」の仕事に惹かれるようになります。
「きっかけは、スタイリストをしている現在の夫と付き合ったこと。彼を見ていたら、好きなことを表現する仕事ってかっこいいなって、強く思うようになったんです。自分も、店頭に立つだけでなく、ブランドの顔としてもっと広く“好き”を発信したい。そう思い、彼に背中を押されながら、上司に相談しました」
希望は通り、プレスに転向。SNSを開設し、フォロワーはどんどん増えました。熱心な活動でプレスとしての立場が確立された頃、ふたたび転機が訪れます。

「夫と結婚してしばらく経った頃、待望の第一子を妊娠したんです。そのときに、会社を辞めて、自分で何かを始めようと決意しました。もともと、夫をはじめ、フリーランスで働いている人が多い環境にいたこともあって、会社に縛られない働き方に憧れていたんですよね。子育てもしやすそうだし『今がタイミングかな』って感じたんです。
ちょうどそんなとき、夫の親友が『お店を一緒にやらないか』と声をかけてくれて。ブランドの立ち上げなんてやったことがなかったけど、チャンスをものにしたくて思い切って踏み出しました」
こうして、夫婦ふたりの世界観がぎゅっと詰まった、大切なお店が生まれたのです。

「こんなに愛情深い人間だったんだ」子どもが気づかせてくれる本当の自分
稲葉さんにとって「これまでのキャリアで一番よかった決断」は、証券会社を辞めたことだそう。好きなことを仕事にしちゃいけない――その考えを転換し、一歩踏み出したからこそ充実した日々にたどり着けたのです。
「夫にも感謝しています。プレスになれたのも、店舗を持つようになれたのも、夫の存在が大きかったので。長いこと一緒にいるからか、今さら感謝や愛情を伝えるのは、なんだか恥ずかしいのですが……。ありがとうって日々思っています」

とはいえ、好きな仕事であっても、しんどくなる瞬間はあるものです。
「やっぱり、会社に属していない不安は大きいです。先のことはわからないし、世間から取り残されている気がして孤独を感じることも多々ありますね。そんなときはお店に並ぶ商品を見渡すようにしています。すると『うん、全部かわいい。イケてる』って思えて安心できる(笑)。このまま頑張っていこうって自分のペースを取り戻せます」
自分の感情をうまくコントロールして、のびやかに働く毎日。ただし子育てにおいては、気持ちを制御するのが難しい場面もあるといいます。
「この前、病院に行かなきゃいけないのに息子がイヤイヤと言うことを聞いてくれなくなって……。予約の時間までに病院に行きたいのに動いてくれないから、私もどんどんイライラしてしまって、ということがありました。
でも、そんなとき息子が『焦っているお母さんが嫌なの』と言葉で教えてくれたんです。『お母さんと手をつないで、ゆっくり歩きたいだけなの』って。それを聞いて、もう、ごめんねって……」

自分の余裕のなさに、しばらくへこんでしまったそう。
「私はダメだなってうんざりしました。でも、とことん落ち込んだあとに気づいたのは子どものことがこんなにも大好きなんだってこと。私には、自分が思っている以上に愛情深い側面がある。知らなかった強くて温かい自分に出会えると、うれしくて頑張ろうって思えるんです。」
泣きたいような気分の日に、ちゃんと幸せを見つける。そのバランス感覚こそが、稲葉さんのハッピーオーラの理由なのかもしれません。
「どんなに散々な日でも夜に4人で布団に入ると、『あぁ、幸せってこういうことか』って思えます。本当に、家族は宝物。これからもみんなで、楽しく健康に生きていけたら。それだけを願っています」
家族みんなにやさしいところがいい
そんな愛しい家族のために、肌に触れるものにはこだわりたいという稲葉さん。
今回は、BOTANISTのベビーラインを試してもらいました。

「BOTANISTの大人用のボディーソープは、以前義実家に遊びにいったときに使ったことがあります。ブランドの名前の通り、ナチュラルな成分でできているので安心感がありましたね。
今回はベビーラインのソープフォームとミルクローションを使わせてもらいました。ソープフォームは、フワフワとやさしい泡でしっとりとした仕上がり。泡切れがいいので、サッと流せるのが便利でした。ミルクローションは、さらっとしているのにしっかり潤うのがいいですよね。シーズン問わず快適に使えそうです」
ソープフォームは98%、ミルクローションは93%が自然由来。無添加・低刺激なところも気に入っています。
「やさしい成分なのに、価格がお手頃でいいですよね。赤ちゃん用のソープやローションって、結構お値段が張るイメージがあって……。BOTANISTのベビーラインは、容量たっぷりなのにお求めやすいから、とても気に入りました!」
「最近出産した友達にも贈りたいです」とほほえみます。
「特に初めて赤ちゃんを産んだときって、何をどう選んだらいいのか迷ってしまうと思うんです。こだわって商品を選びたいと願うお父さんお母さんに、ぜひおすすめしたいです」

人と比べてしまう自分もまるっと受け入れて
わたしたちBOTANISTは、ナチュラルに生きるすべての人を応援しています。あふれる情報に左右されがちなこの時代。それでも、都会の喧騒のなかでも力強く芽吹く植物のように、自分らしく輝いてほしいと願っています。
では、稲葉さんが自分のことをナチュラルだと思う瞬間は?
「私にとってナチュラルとは、自分の好きなものをちゃんとわかって表現できている状態です。たとえば、その日のファッションのポイントを自分の言葉ですぐ説明できるようなイメージ。販売員時代からそれを徹底している私は、ナチュラルかもしれませんね」

これからも稲葉さんは、飾らない笑顔で“好き”を追求していきます。
「今後やりたいことは、たくさんあります。アメリカで古着を買い付けてみたいし、アパレルの枠を超えてモーテルの経営とかもしてみたい。よく夫と妄想を膨らませています。でも今は子育てをめいっぱい楽しみたい。しばらくは、子どもの成長にしっかり向き合っていきます」
肩の力を抜いて、日々をポジティブに楽しむ。稲葉さんのはじける笑顔はあたりを照らす光のようです。
最後に、そんな稲葉さんからいま自分らしくいられずに悩んでいる人にアドバイスはありますか。
「私は人に何かを言えるような立場ではないですが、まずは無理しすぎないことですかね。人ってどうしても無理しちゃうものですが、『こうでなきゃ』と自分を追い込むと、絶対キツくなっちゃうから。
そうじゃなくて、好きなことを意識的に楽しんでみる。周囲の声が気になってきても、そんな自分を受け入れながら堂々と“好き”を発信し続ける。そうしていくうちに自分らしいスタイルが見えてくるんじゃないかなって思います」
instagram:@inabamarie
撮影:芝山健太
取材・執筆:安岡晴香
編集:安岡倫子(株式会社ツドイ)