BOTANIST Journal 植物と共に生きる。

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PEOPLE 08

「植物も生きている」と感じた映画のススメ―前田有紀さん―

映画や小説などが、人生の価値観を大きく変えてくれることもあります。この連載企画は「植物も生きている」と実感させてくれた作品を様々な方々がリコメンド。今回はフラワーアーティストとして活躍する前田有紀さんにお話を聞きました。

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「生き物のあたたかさ」に惹かれ
フラワーアーティストに転身

元テレビ朝日のアナウンサーとして前田有紀さんを知る人も多いかもしれません。
現在は「花とあなたが出会う場所」をコンセプトに、フラワーデザインチームをプロデュースするフラワーアーティストとして活躍されています。
そんな前田さんが、オンラインやポップアップショップを通じて、お花や植物を届ける仕事を志したのは「生き物のあたたかさ」に惹かれたから。
「ただ日用品をオンラインで買うのとは違った体験、例えば、ひとりひとりのお客様に、お手紙と購入くださったお花のストーリーの資料を添えるなどして、「明るい気持ち」みたいなものまで届けたいなって思うんです。
アナウンサーをしていたときは、本当にすごく忙しくて、しかも都会の中心だけの生活をしていて、息苦しさを感じていました。もちろん、年齢や立場、肩書きや数字にすごく左右されて、人から見られることが前提になっていたというのも関係しているとも思うんですけど、とにかく息苦しさを感じることが多かったんです。
そんなときに、部屋に花を飾ることで、わたしとは違う時間軸でゆっくりと成長する植物の姿に、マイペースでいいんだなって救われることが多かったんです。
だからわたしも植物から感じる何かまでを、届けられたらいいなって思って」

ワクワクの感情を上手に描いた
『ビッグ・フィッシュ』

花や植物の生きている姿、それを実感したときにおこる心や生活の変化という自らの実体験をもとに、新たな人生を送る前田さん。彼女が紹介してくれる映画はティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』。
「ユアン・マクレガー演じる主人公の男性が、プロポーズするシーンがあるんです。女性が窓を開けたら、そこには水仙の花が一面に広がっていて。もちろん主人公は彼女が水仙の花が好きなことは知っていて、そのようなプロポーズをするんですが、やっぱり、お花って人の心をワクワクさせるものでもあると思うんです。プロポーズを受けた彼女がとても感動しながらワクワクしている姿をみて、共感したというか、すごく印象に残っています」

植物の死を
ポジティブな体験に。

前田さんにとって植物とは、肩書きや地位など社会からの評価ではなく、自分らしく生きる喜びを気づかせてくれたきっかけであり、植物によってワクワクする体験を届けるという職業を選択し、日々ともに暮らしている存在。
「お客さんの多くは、お花や植物に対して、ネガティブなイメージを持っている人が多かったんですね。すぐ枯らしちゃうから、私には育てられないとか。でも花は枯れるものだし。。。お花や植物の死に慣れていないんですよね。お花も植物も、ひとつひとつに個性があって、それぞれ生きる力が、ちょっとずつ違うんです。虫に食われちゃってやられちゃうのもあったり、たくましく生き残っていくものがあったり。そういう植物の力強さに惹かれている部分もすごくあるので、とにかくネガティブな感覚を払拭して、最高の体験、散るまで綺麗だったって、すごくポジティブな体験に変えていけたら良いなって思ってます」
人間と同じようにお花や植物も、死、そして枯れるもの。そんな生々しい植物の「生」とポジティブに向き合う前田さんに、美しさや可愛いらしさはもちろん、表層的な感情以上の豊かさまでを、届けてもらってはいかがでしょうか?

PROFILE

前田有紀さん

フラワーアーティスト 前田有紀
10年間テレビ局に勤務した後、2013年イギリスに留学。コッツウォルズ・グロセスター州の古城で見習いガーデナーとして働いた後、都内のフラワーショップで3年の修業を積む。「人の暮らしの中で、花と緑をもっと身近にしたい」という思いからイベントやウェディングの装花や作品制作など、様々な空間での花のあり方を提案する。2018年秋に自身のフラワーブランドguiを立ち上げ、幅広く活動する。

共に生きる LIVE WITH

「共に生きる LIVE WITH 」

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「COEXISTENCE(共存)」。植物と関わる仕事や活動を行う3人の専門家にフィーチャーし、ニューノーマル時代の新しい生き方について考えるきっかけをお届けします。植物と共に生きる彼女らのボタニカルストーリーをぜひご覧ください。